土の掘る量と山止めの大きさ、防水の量で差が出ます
地下室は地上の建物に比べてとても高いと思われています。ここでは地下室の価格に関して分析してゆきます。
地下室をコンクリートで作る場合、つくり方は地上に建物を造るときとあまり変りません。違うところはまず地面に一回り大きな穴を掘ってゆき、土を外部に処分します。これを残土処理といいます。3m以上の穴を掘ると土が崩れて中に入ってしまうので山止めといわれる柵を作ります。
この中にコンクリートで人の入る箱を作ってゆくわけです。地上の建物は屋根に防水をかけますが、地下の建物は壁と床下に防水をかけてゆきます。つまり、地上で作る場合の金額差は土の掘る量と山止めの大きさ、防水の量で差が出ます。あまり掘らずに地上に1mくらい頭を出した半地下や山止め無しのオープンカットが安くできます。
次の見積もりは10坪ほどの地下工事の見積もり例です。
上から順に説明しますと1の仮設工事は工事の準備をする費用です。内容のおおきな物は大型車の出入りのためのガードマン費用と大型車で道路を傷めないように配慮した鉄板のリース代です。面積が大きくなってもあまり変動はありません。
次の土工事は土を動かすための工事で、穴を掘って出た土の処分費で1立方メートルあたり1万円で土工事の70%を占めています。このとき水が出てヘドロ状になった土は受け入れ先がなく産業廃棄物として多大な処分費がかかります。
山留め工事は穴を掘ったあとの土が崩れてこないようにする土止めで、H型鋼を地面に掘り込んでその間に板をはめ込みます。地下の外周面積に比例し1平米当たり2万円ぐらいです。
コンクリート工事はコンクリート1立方メートルあたり2万円の目安です。躯体の床、壁、天井の20~25センチの厚さに表面積をかけます。内部通りにコンクリートの壁があるときはこの分も算入します。
型枠工事はコンクリートが流れ出さないように枠を造る工事です。山留めに先に防水をつけて施工する、先やり防水では外回りの壁は一面だけで済みます。中通りの壁は両面の面積です。1平米当たり6000円の目安です。
鉄筋工事は鉄筋コンクリート中に含まれる鉄筋量を拾い出したものです。住宅の場合、地下の大きさが小さいので1立方メートル当たり150kgが目安となります。鋼材は最近値段の変動が激しく、金額が安定しないのですが、材料と配筋、運搬を含めて1トン当たり20万円ぐらいとなります。
左官工事は床の防水工事をする前に均すためと、 床の耐圧板を均す仕事です。その他、躯体とサッシ回りやPコンの穴埋め、タラップの取付が見込まれています。
防水工事は大きく二つに分けて先やり防水と後やり防水があります。敷地の余裕があるときは躯体の回りに60cmほどの空きを設けて、型枠をはずした後から施工する後やりが一般的ですが、都会の狭い敷地ギリギリに施工する場合、山留めや底付けにシート状の防水を先につけておき、その上からコンクリートを打ち込みます。防水材料には性能の高いボルクレイ防水を採用しています。底面で1平方メートル当たり6500円、山留め部は7500円です。
電気設備工事は配線とコンクリート躯体内配管で金額の比率は多くありません。
換気設備工事は熱交換型の換気システムを使います。1階のコンディショニングされた空気を熱交換して地下に排気します。
断熱工事はコンクリートの躯体に内側からウレタンの断熱材を吹き付けてプラスターボードを貼ります。夏場暑い空気が涼しいコンクリート面に触れて結露を起こすことを防ぎます。
内部工事は大工が内部の床、壁、天井をつくる工事です。今回は水が出ない場所なので、床はフリーフロアーで床から上げて施工しています。壁、天井を打ち放しの仕上げとすればここは半分以下にできますし、地下駐車場の仕様でしたらほとんど0になります。
最後に近隣調査費は隣に接近して地下を造るとき等、振動で建物に影響を与えないか壁のクラックなど事前に調査し写真をとっておく作業です。隣地の状況により金額は変りますがおおむね15万ぐらいです。
このように見積もりを分析してみると、コンクリート躯体は別にして土工事、山留め、内部工事が大きな比率を占めますので、ここを重点的に圧縮してゆきます。
上の図は地下の形式を完全地下型、半地下型、深基礎型に分けて見ました。 右へ行くほうが安くできます。
半地下型は地面から1mほど頭を出したものです。残土処理がこの分減ることと、掘る深さが1.5mぐらいのため型枠を無くしたオープンカットとしやすいくなります。また、住宅用基礎がなくなる分安くできます。
深基礎型の地下室は住宅用基礎の延長で造って行きます。コンクリートの天井はなく木製の1階床が天井となります。内装はコンクリートの打ち放しで床は左官仕上げで坪30万円ぐらいの目安です。天井高は1.8mと低くワインセラーや収納庫に最適です。